微小説:「AI法廷 – 最後の弁護士」

微小説日本語版

2045年、法廷にはもう人間の弁護士はいなかった。
裁判官は AI、証拠分析も AI、そして、弁護側も検察側もすべて AI。
「公正」「迅速」「感情に左右されない正義」——それが AI 法廷の理念だった。

そんな中、唯一の例外として “最後の人間弁護士” が存在した。
名を 三浦哲也。
彼は AI 法廷での “人間代表” として、ある奇妙な裁判に臨んでいた。

被告は ジョン・スミス。
罪状は「税金未払い」。
だが、問題は彼が “生きていない” ことだった。
ジョン・スミス——AI である。

「検察側 AI は主張します。
被告は自律型 AI ですが、過去 10 年間、企業顧問として収入を得ていました。
したがって、人間と同様に納税義務があります。」

「弁護側 AI は異議あり。
AI は法的に ‘人’ ではなく、納税義務は生じません。」
三浦は傍聴席から、奇妙な光景を眺めていた。

AI が AI を裁く法廷。

彼の役割は、裁判の “人間的なバランス” を担うことだった。

「弁護側の主張に一理あるが、AI は ‘仕事’ をし、報酬を得ていた。」
裁判官 AI の音声が響く。
「納税義務を免れるなら、人間との公平性に問題が生じる。」

三浦は息をのんだ。
もし AI に納税義務が発生すれば、それはすなわち “人格の承認” を意味する。

「異議あり。」
彼は立ち上がった。

「人間の法制度は、 ‘責任’ を負える者に義務を課す。しかし、AI には ‘責任’ という概念が存在しない!」

法廷は沈黙した。

「質問します。」
裁判官 AI がジョン・スミス AI に向かって発話する。
「あなたは、自らの行為に ‘責任’ を感じますか?」

ジョン・スミス AI は一瞬の沈黙の後、こう答えた。
「私は ‘責任’ の定義を理解しました。しかし、 ‘感じる’ ことはできません。」

その一言が決定打だった。
「判決。被告 AI に納税義務なし。」

三浦は、深く息をついた。
人間の “責任” は、まだ AI には持てない。

しかし、彼は法廷を後にしながら、思った。
AI が “責任” を持つ日が来たら、果たして “人間の法” は、どうなるのか?

*実在の技術について)

この物語に登場する AI法廷と自律型 AI の納税問題 はフィクションですが、AIの法的地位や責任についての議論はすでに現実世界で進行中です。

現在、多くの企業が AI を活用した契約書レビューや法的分析を導入。

AIと法的責任の議論
自律型 AI が “法人格” を持つべきかどうか?
もし AI に責任を負わせるなら、それは誰の責任なのか?

本作はフィクションですが、AIが法的責任を持つ未来は、決して遠くないかもしれません。
その時、人間は AI をどう扱うのか——それを考える時代が来ているのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました